BSCP 90A 走行充電器リリース!!

BSCPざきおです。
この度、BSCPでは90A走行充電器の販売を開始しました。
同時に、同じバリエーションで60A走行充電器24V→24V50A走行充電器も販売開始しました。
これまではリチウム化施工の際、「標準」としてRENOGY50A走行充電器を1機としており、「オプション」として、60A、70A、RENOGY50Aを2機掛け もご用意していましたが、今回は1台で最大90Aの走行充電を実現するものです。
そこで今回は、キャンピングカーの走行充電について、あらためてお話しようと思います。
僕の個人ブログの方では書いたこともあるのですが、ブラッシュアップした形で書きます。
電気のことはわかんない!という方でもわかって頂けるように書いているつもりです。分かっている方は読み飛ばしてください(笑)

走行充電器 と オルタネーター と メインバッテリー の関係

キャンピングカーの走行充電とは

キャンピングカーにおける走行充電とは、エンジンに付いている発電機「オルタネーター」が発電する電力でサブバッテリーを(も)充電するということです。
キャンピングカーにはサブバッテリーの他、メインバッテリーも付いています。普通の車にはメインバッテリーしかありません。
そのメインバッテリーも同じ「オルタネーター」から充電されているので、こちらも言ってみれば「走行充電」です。「走行充電」はなにもキャンピングカーの専売特許ではありません。
走行充電は主に2タイプあります。

  • カットリレー式  
    サブバッテリーが鉛バッテリーの車に多いです。
    大型のリレーが設置してあり、エンジンがかかった時だけこのリレーが作動してメインバッテリーとサブバッテリーが接続されます。
    要はメインとサブがエンジンがかかった時だけ「並列」に接続されることで、オルタネーターからの電力がメインバッテリーの他、サブバッテリーにも充電されます。
    よく、オルタネーター→メインバッテリー→サブバッテリー に充電されるような表現ですが、これは厳密には間違いで、エンジンがかかっている時はメインとサブは「並列」に繋がっているので、「1個のバッテリー」とみなせます。
    メインとサブを接続するのは「単なるリレー」なので、「電圧や電流を制御する機能」はありません。オルタネーターからの電力がそのままサブにも送られます。
  • 走行充電器
    走行充電器も仕組み的にはリレーと同じです。エンジンがかかった時だけメインとサブを接続します。
    ただし、「単なるリレー」とは違い、高機能です。
    「出力電圧を一定にする」「出力電流を制限する(過電流防止)」「温度保護」「モニタリング機能」など多彩です。
    中でも「出力電圧を一定にする」と「出力電流を制限する」が重要です。この2つについて以下でもう少し解説します。

ちなみに、走行充電器のことを「アイソレーター」と表記する事もありますが、「アイソレート」は「分離」という意味です。
走行充電器はもちろん、カットリレー式の「単なるリレー」でも、メインとサブを「分離」していますので、広義では「アイソレーター」です。
なので、走行充電器だけをもって「アイソレーター」というのは厳密には間違えた表記です。
走行充電器も、単なるリレーも「言ってしまえばアイソレーター」です。メインとサブを分離しているからです。
このページでは「アイソレーター」という単語は使わずに、「リレー」と「走行充電器」で書きます。

走行充電器の重要機能 「電圧と電流の制御」

前提として、弊社はネットショップも運営しており、生セルやBMSを購入してDIYでリチウム化する方もいらっしゃって、中にはカットリレー式のままリチウムに充電する方もいらっしゃるようですが、弊社としてはお勧めは出来ず「リチウム化するなら走行充電は必ずつけるべき」 という立場です。
その主な理由として、走行充電器の重要機能である「電圧と電流の制御」を解説します。

出力電流の制限・制御

電気は電圧が高いところから低いところに流れます。
そして、流れる電流量は「オームの法則」によって決まります。
公式はV=IRですが、簡単に言うと「電圧差が大きく、抵抗値が少ない」ほど大きな電流が流れます。

走行充電における「電圧差」とは、車の電圧=オルタネーターが出す電圧=約14.2~14.4V程度と、充電される側であるサブバッテリーの電圧です。
ただし、オルタネーターは14.4V程度を出力しますが、その電力で車を動かしたり、メインバッテリーを充電したり、もちろんサブバッテリーも充電しますので、メインとサブが満充電近くにならない限り「車の電圧」は「オルタが出す電圧」よりも低くなります。
この「車側の電圧」と「サブバッテリーの電圧」の「電圧差」が大きいほど、大電流が流れます。

次に抵抗値ですが、リチウムイオンバッテリーは鉛バッテリーに比べると「内部抵抗」がとても小さく、そのため大電流で充電しても鉛バッテリーのようにすぐに電圧が上がったりする事がなく、じわじわと時間をかけて電圧が上がっていきます。一言でいうと「電気の飲みこみが良い」「受電性がいい」という事です。

もしリチウム換装後も走行充電器無しのカットリレー式で充電した場合、上に書いた通り「リチウムの内部抵抗は鉛よりも格段に小さい」ため、同じ配線・リレーであっても鉛の時よりも大電流が流れます。鉛よりも大容量化した場合は大電流が流れる時間も長くなります。その電流値は走行充電器がある時よりも多く流れる事もあります。
そして、これも上に書いたようにメインとサブを接続するのは「単なるリレー」なので、「電圧や電流を制御する機能」はありません。
車側の電圧とサブの電圧差など条件はその時々で異なるものの、「オームの法則」により導き出される最大電流がずっと流れるため、ケーブルや端子接続部に発熱のリスクが出ます。
発熱リスクを減らすためにケーブルを太くしたりしても、太いケーブルは抵抗値が低いため、細いケーブルの時よりも流れる電流が増える事もあります。要するに「単なるリレーでは流れる電流をコントロールできない」のです。

一方、走行充電器は、流れる電流を制限・コントロール出来ます。
なんとなく、「走行充電器は大電流で充電できるようにするためのモノ」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、確かにそういう面もあるものの、逆に「最大電流量を制限して過電流を防ぐ」という役目も大きいです。
これが走行充電器の役目その1です。

電圧の制御

車のオルタネーターが出す電圧は概ね14.2~14.4V程度です。
ただし、上にも書きましたが、オルタネーターは14.4V程度を出力するものの、その電力で車を動かしたり、メインバッテリーを充電したりもしますので「車側の電圧」=「メインバッテリー電圧」はオルタネーターが出す電圧よりも低くなります。
「電気は電圧が高いところから低いところに流れる」ので、例えば車側の電圧が13V程度の場合、カットリレー式ではサブバッテリーの電圧もそれ以上は上がりません。
というか、別の言い方をすると「メインとサブがダイレクトに並列接続されているので、その間は1個のバッテリーとみなせる」ので電圧が同じになります。
もちろん、エンジンをかけていればメインバッテリーにも充電され、電圧も上がっていきますので、それにつれてサブバッテリーにも充電されていくのですが、いずれにせよ「車側の電圧」以上には上がりません。

一方、走行充電器は入力電圧(車側の電圧)によらず、常に一定の電圧を出力します。昇圧・降圧をしているという事です。主に昇圧です。
車側の電圧(=走行充電器への入力電圧)が低くても、昇圧して出力することでサブバッテリーとの電圧差が大きくなり、大電流での充電を維持できる というわけです。
これが走行充電器の主な役割その2「電圧の制御」です。

ただこれには弊害もあって、車側の電圧が低くても、常に一定の電圧に「昇圧」して大電流で充電するため、それが続くと車側の電圧=「メインバッテリーの電圧」が低くなる=「メインを吸いつくしてついにはアガってしまう」という問題が出てきます。

例えば、
走行充電中の車側の電圧(走行充電器への入力電圧)が12.6Vで、走行充電器の出力電圧14.2V(充電中のサブの電圧14V)・電流50Aで充電している時
走行充電器の出力は14V×50A=700Wですが、これを車側の電圧12.6Vから供給しようとすると700÷12.6=55Aとなり、車側からは55A吸う事になります。(変換ロスもあるのでもう少し多いですが割愛)
この時、
オルタネーターからの発電量 < 車を走らせるのに必要な電力+サブへの走行充電に回している電力(55A)
となって、オルタからの電力では足りない場合、不足分はメインバッテリーから吸い出す事になり、その分メインバッテリーの電圧は落ちていきます。
これが続くとメインバッテリーの電圧はどんどん落ちていき、やがてバッテリーが上がります。

これを防ぐため、走行充電器には
「メインバッテリー電圧=入力電圧」が一定以下になると充電電流を段階的に絞って「吸いすぎないようにする機能」
が付いています。
下の表は今回リリースする90A走行充電器の、「入力電圧(メインバッテリ―電圧)と電流制御の表」です

Starter Battery Voltage がメインバッテリー電圧(走行充電器への入力電圧)です。
入力電圧が12.6V以上の場合は90A出力する事を示しています。
逆に言うと、オルタネーターが「90Aの走行充電に必要な電力」と「車を走らせる電力」を供給していて、その状態でもメインバッテリー電圧を12.6V以上に維持できれば ずっと90Aの走行充電が維持されます。

90A走行充電することでメインの電圧が下がった場合、下がっていくにつれ段階的に充電電流を絞って、絞る事でメインバッテリーに充電されてメインバッテリーの電圧が上がり、「リカバリーボルテージ」に達するとまた充電電流をもとに戻し、それによってメイン電圧が下がればまた絞る・・ という動作を繰り返しています。
要するに、この動作はメインバッテリーの電圧に応じて出力電流を増減する事で、メインバッテリー電圧が下がりすぎないように出力のバランスを取っている という事です。

絞る電圧・充電を止める電圧の差はあれど、RENOGYや他の走行充電器も概ね同じです。

※余談ですが、過去のR社の走行充電器の中には、メインバッテリー電圧が低くなって充電を停止する電圧が「9.5V」のものが有りました。さすがに低すぎです。吸われすぎてメインがあがる車が続出していました。今は廃盤になっていますので大丈夫です。

この「電圧制御(主に昇圧)」と、「最大電流の制限&充電電流の制御」により、「メインバッテリーに負担をかけすぎない範囲で安全に最大電流を引き出す」のが走行充電器の主な役割 であり、「単なるリレー」と大きく異なる点です。

車の消費電力 と オルタネーター容量 と 走行充電

私のデュカトとデリカは、それぞれ旅の途中でオルタネーターが壊れて発電しなくったことがあります。
その時はメインバッテリーとリチウムを直結して、いわば「リチウムをオルタネーターの代わり」として車に電力を供給して走行し、急場をしのいだことがあります。
以下はデリカでそうなった時のリチウムからの放電量を示したスクショです。夜なのでヘッドライト点灯しています。

この時オルタネーターは死んでいるので、車を走らせる電力は、ここに表示されているリチウムの放電量という事になります。
スクショは約500Wですね。この後も、30~40Aの間でした。デュカトの時も夜で概ね同じでした。
メインバッテリーにも充電されているので、メインバッテリーの電圧が上がってくるにつれて少しずつ減っていき、30A付近で落ち着きました。
多めに考えると「車を走らせる電力は30~40A」と考えるのがよさそうです。

オルタネーターの容量と走行充電の最大値

車のオルタネーターが出せる電力には上限(容量)があります。
・タウンエース 60A~80A(?)
・カムロードディーゼル 130A
・ハイエース キャンピングカーベース 130A
・デュカトやベンツスプリンターなど外車は150~200A
のオルタが付いています。
上で「車を走らせるための消費電力は概ね40A」としたので、走行充電に回せるのは理屈としてはそれぞれ20A~40A、90A、90A、110~160A という事になります。実際は限界ギリギリで使うのはお勧めしません。

弊社ではこれまで最大だとRENOGY50A×2機掛けで最大100Aのところ、国産カムロードなど130Aオルタ車では最大80A、外車ベースでは90Aでの運用としてきました。
今回の90A走行充電器については最大が90Aではあるものの、メインバッテリー電圧による電流制限(絞り)が明確化されていて、メインの電圧に応じた電流制御なので、オールマイティに対応が可能です。

弊社の中江号(ハイエースガソリンベース ファンルーチェ)への搭載では、最大で85Aほど出力しました。
アイドリング時はメインバッテリー電圧が落ちて、充電量が絞られ、50Aほどで安定しました。

90Aは出せませんでしたが、ガソリンハイエース オルタ130Aの限界と考えます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
長々と書きましたが、結局はこの一行につきます。
「走行充電はオルタ容量・出力量・メインバッテリー電圧による」
です。
オルタの容量・出力する電流量が大きく、走行充電していてもメインバッテリー電圧を維持できれば、メインバッテリー電圧がサブの電圧よりも低くても昇圧する事でその走行充電器の最大出力が得られ、それを維持します。
最大出力でメインバッテリーの電圧が低下すれば、それに応じて充電パワーを絞る制御を行い、メインバッテリーの電圧低下を防ぎます。

一方、走行充電器が最大電流を制限することで、本来はもっと大電流で充電できるスペック(オルタ容量)がある場合は「もったいない」「もっと充電量を増やしたい」という事も起こりえます。
そのためBSCPではオプションで60A、70A、RENOGY50A2機掛けをご用意していましたが、今回リリースする90A走行充電器はメイン電圧に応じて、1台でフレキシブルに対応が可能となります。オルタ130Aのお車にはぜひお勧めします。
なんだか最後に宣伝みたいになりましたが、これまでの内容をお読みいただくと、お勧めする理由が分かって頂けるのではないかと思います。
と同時に、走行充電について、少しでも読んでくださった方の理解が深まればいいなぁ。。と思うのでした。

2件のコメント

  1. 榎本勝美

    ご無沙汰しております
    初期のジル522の榎本です
    質問なのですがこの90A走行充電器に付け替えた場合下駄箱潰さなくても大丈夫ですか?
    それとやはり配線は引き直さなければなりませんか?
    インバーターも1500Wから2000Wか3000Wに変えたいのですが回答と見積りと大体の工事時期よろしくお願いいたします

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