リチウムってどのくらい使えるの?

BLUE SKY CAMPER PROJECT ざきおです。
BSCPのHPを作り、ブログスペースもあるので記事の充実を図りたいのですが、これまでのブログの方で大事な事は結構書いたので、あまりネタがありません(笑) 
いや、まぁ色々ありますけどね。あるんですが、それよりも何よりも、とりあえず「重要度の高い記事」をいくつか2024年版にアレンジして再掲しようと思います。

最初の記事は、リチウム化のお問い合わせを頂く中で、「〇〇Ahにするとエアコンはどれくらい使えますか?」というようなご質問がとても多いので、今回は「リチウム化すると電気はどのくらい使えるの?」という事について。特に焦点を当てて書いてみます。

かなり初心者の方向けに書いてます。電気の事はちんぷんかんぶん!という方でも理解してもらえるように書いているので、わかっている方は読み飛ばしてください。

バッテリーの容量表記について

まず、バッテリーの容量を表す3つの単位の表記についてご説明します。

Ah(アンペアアワー)表記

バッテリーの容量を表す単位として、よく400Ahとか600Ahとか書かれてますが、この「Ah」はアンペアアワーという単位です。

1Ah=1000mAh(ミリアンペアアワー)です。 

Youtubeとかで紹介されているポータブル電源なんかで、サムネイル(目を引くトップ画像の事)に「100,000mAh!!」とか、やたらゼロが多く書かれていることがありますが、100,000mAhは、Ahに直すとゼロを3つ取って単なる「100Ah」です。

やたらゼロを増やして「いかにも大容量に見せかけるため」の演出として、あえてmAh表記を使っているんです。全く感心しませんね。
ポータブル電源では、mAh表記は減ってきたように思いますが、モバイルバッテリーなんかでは未だに使われています。

問題なのは、Ah表記はそれだけではバッテリー容量を表すのには不十分な単位なんです。なぜかというと。。それを説明するためにはあと2つ、単位を知る必要があります。

電圧V(ボルト)

電圧を表す単位としてV(ボルト)があります。こちらは馴染みのある単位でしょう。
乾電池は1.5V。2本直列で3V。ミニ四駆でよく使いましたね。
7.2Vバッテリーは田宮のラジコンでよく使いました。(筆者はねw)

で、上で書いた「Ah表記が容量を表すのに不十分」な理由として、
Ahでの容量表記は、電圧V(ボルト)によって変わる」んです。

これを説明するために、もう一つの単位として、

Wh(ワットアワー)

があります。Wに時間をかけたもので、「電力量」を表す単位です。

Wh=V×Ah です。

電圧1Vで100Ahのバッテリーなら、100Whとなります。
そしてこの「Wh」(ワットアワー)こそが「バッテリーの容量」を表すための完全な表記 となります。

バッテリーの容量表記はWhに統一しよう!!

非常に簡単な事なんですが、ここまでの話をまとめると、上で「Ah表記はバッテリーの容量を表すのに不十分な単位」と書いた理由がわかると思います。

1V×100Ahなら100Whだし、3.2V100Ahなら320Whになる。

要するに、Ah表記の場合、かけるVによって容量(電力量)であるWhがコロコロ変わるわけです。

なので、Ah表記するなら、前提として「何Vでの話なの?」ってことになるんです。

例えば、何度も例に出して申し訳ないですが、Youtubeで「ポータブル電源 mah」で検索して3個目に出てきたコレ。

チャンネル名は隠しました。
でもこのチャンネルの方も「案件」なお仕事ですから。クライアントからの資料を書かざるを得ないわけです。
別に415000mAhはウソじゃないですし。まぎらわしいけど。

で、このポタ電。415000mAh で、容量は1500Whとなってます。
これ系のポタ電は可搬性も重要なので「小さく・軽く・大容量」を目指すため、使っているリチウムはリン酸鉄系よりもエネルギー密度が高い=軽い三元系のリチウムを使っています。(※注:2022年頃のお話です。2024年現在はリン酸鉄系も増えました)
リン酸鉄系は定格電圧3.2Vですが、三元系は定格3.7Vです。それを基に計算してみると。。

やたら桁数を増やしてでっかく書いてある「415,000mAh」は、ゼロを3つ取って「単なる」415Ahです。
415Ahって結構大きくない?と思わせるところがミソです。実は415Ahは12Vとかではなく、セル電圧3.7Vでってことなんです。

計算すると、415Ah×3.7V=1535Whって事になります。

上記の通り、415Ah(415000mAh) は「3.7Vで」って話なんです。

このように、Ah表記はかける電圧V(ボルト)によりコロコロ変わるので、バッテリーの容量表記としては不十分な単位であり、Whこそがバッテリー容量(電力量)を表す完全無欠の単位 ということです。

Whだけ書こうぜ。mAh表記はやたら数字多く見せて惑わせるだけで、いらんだろ?どうしても大きな数字を書きたいなら電圧かWhも併記しよう!って思います。

まったく、見る人(特に初心者)を惑わせる、感心しない表記方法です。2024年現在は以前に比べて改まってきましたけどね。
皆さんもポタ電やバッテリーの容量をチェックする時は「Wh」を気にしてチェックしてみてください。
期待して買ったポタ電が、実はあまり容量が大きくなかった。。なんてことを避けられると思います。

キャンピングカーに搭載するリチウムの容量は?

バッテリーの容量表記はWhがベストということをご理解いただいた上で、やっとキャンピングカーの話になります。

Whがベスト!と言いつつ、弊社でも「〇〇Ah」として販売しています。230Ahとか300Ahとか。ただし、電圧とWhも併記しています。
当方でリチウムの取付をご依頼いただいたお客様に取り付けるのは、主に400Ahと600Ahが多いです。以下、600Ahを例に解説します。

キャンピングカーに搭載するリン酸鉄系リチウムイオンの単セルの電圧は定格3.2Vです。
12V車で使う場合、それを4直列して、3.2V×4=定格12.8Vとして使用します。
実際には、12V車で600Ahにする場合は、3.2V 600Ahの単セルは現状無いので、「3.2V 300Ah」の単セルを2並列して「3.2V 600Ah」とし、それを4直列して「12.8V 600Ah」 にします。ですので、バッテリーの個数としては8個使う事になります。

24V車の場合、8直列する必要があるので、12V車のように「最初に単セルを2並列」する事はしません。単純に「3.2V 300Ah」のセルを8直列して「25.6V 300Ah」 とします。そしてその容量(電力量)は

  • 12V車なら定格12.8V×600Ah=7680Wh
  • 24V車なら定格25.6V×300Ah=7680Wh

で、どちらも同じという事になります。使ってる個数が同じなので当然ですね。
ちなみに、ポータブル電源の雄・EcoFlowの 、この記事を書いてる時点での最新の「DELTA Pro 3」は4096Whです。600Ah=7680Whは倍近い容量があります。

で、どれくらい使えるのか?

という話になるわけです。やっと。

どれくらい使えるのか?の計算方法

家電の消費電力は「W」で表されます。例えばドライヤーは1200wくらいです。どの家電にも、よーく見ると消費電力が書いてあります。

600Ahの電力量は7680Whですので、1200Wのドライヤーなら単純計算で

7680Wh(バッテリー容量)÷1200W(消費電力)=6.4時間 使えることになります。そういう計算です。

実際には「インバーターの変換ロス」があるので、消費電力はもう少し大きくなります。インバーターの変換効率を90%として、1200Wのドライヤーを使うとすると、バッテリーから持ち出す電力は 1200W÷0.9=1333W となるので、使える時間はもう少し短くなります。

電子レンジはキャンピングカーの電装品の中では消費電力が大きいものの代表格で、ドライヤーと同じく1200Wくらい使いますが、使うのはせいぜい5分程度と短いので、実はバッテリーの残量にはあまり影響しません。リチウムの場合はです。

鉛の場合は大電力を使うと途端に電圧が落ちて戻りが悪い=大電力を使うと取り出せる電力量が減るという鉛の特性があるので、別な意味でダメです。
下のスクショは、ある方で電子レンジを稼働させた時のスクショです。インバーター効率は85%くらいでしょうかね。

スマホアプリで見るBMS上のこの数値はバッテリーからどれくらい放電しているか?の数値で、インバーターの変換ロスも含まれた数値なので、こちらを見ておけばいいと思います。

などを付ければスマホで見るのとほぼ同じ値が確認できますし、「現在の消費電力で何時間持つか?」が常に表示されるので便利です。

じゃあエアコンはどれくらい使えるのか?

家庭用エアコンには、室内機の下側に消費電力などが記載した銘板シールが貼ってあります。
実際は上記の「インバーターの変換ロス」があるので、リチウムから持ち出すのは、冷房時の最大で800Wくらいです。
設定温度まで冷やし切ると200W以下で動きます。インバーター制御によってきめ細かくパワーがコントロールされています。

外気温や設定温度により消費電力が変わるので、「エアコンはどれくらい使えますか?」という質問には一概には答えられないのです。

最大800Wでなら7680Wh÷800W=9.6時間 ですし、半分の400Wでなら19.2時間。200Wでなら38.4時間 使えることになります。そういう計算です。

実際に600Ahを積んだ方の体験談としては、夏にエアコンをずっと。最強とかではなく常識的な26℃とかの設定で、夕方から翌朝まで一晩30~40%減が多いようです。
Ahに換算すると180~240Ah減という事になります。

エアコンを使わない時期は?

エアコンを使わない時期は、7680Whを使い切る事は困難です。
僕は400Ah(5120Wh)ですが、それでも減っても、一晩15~20%程度です。600Ahなら10~15%程度でしょう。
基本的にエアコンを使う時期以外は、電気の心配は不要です。

充電を強くすることもバッテリー容量と同じくらい重要

上で書いた通り、一晩で30~40%(180~240Ah)減った電力を、翌日いかにして復活させるか?が重要なわけです。
お問い合わせをくださる皆様の傾向として、どうしても最初はバッテリー容量にばかり気が行きがちなように思えます。
が、充電を強くする事も同じくらい重要です。

充電が弱ければ、いかに大容量なバッテリーを積んだとしても使う分に充電が追い付かず、日を追うごとにだんだん減っていき、いつかはゼロになります。
最初の数日は大容量の恩恵にあずかれるでしょうが、ゼロになってからは1日の使用分を賄う事が出来ずに単なるウェイト・文鎮になり、せっかくリチウム積んでるのにRVパークや電源サイトを探す羽目になります。負けです(何が?笑)
逆に、充電が強ければバッテリー容量は1~2日持つ容量があればいいとも言えます。多すぎても重いですし。600Ahも要らず、400Ahでも充分かもしれません。エアコン無しの車なら200Ahでも充分だと思います。

ソーラーは地味だけど働き者

その、充電を強くするために、走行充電に加えて、ソーラーの搭載・または増設をお勧めしています。
一か所に長逗留する旅なら、外部電源を除けばソーラーしか頼れませんので、ソーラーはあればあるだけいいですし、毎日少しずつ移動する旅でも500W程度あると心強いと思います。

当方では、ソーラーの1日の発電量は搭載量の70%(冬季は50%)×4時間分 でご案内しています。

上で書いた40%分(240Ah)の消費を賄うのに、仮に走行充電50Aだけだと4-5時間かかる計算になります。ちょっと長いですよね。

そこに、例えば500Wソーラ―があると、500×0.7×4=1400Whの発電が期待できます。
これは7680Whのバッテリーに対して18%/日です。Ahに直すと108Ah。実際は、夏場はもうちょい入ります。逆に、200Wだと計算上8%/日くらいにしかなりません。

ソーラーでこれだけ入ってくれれば、残り132Ahを走行充電するのに3時間程度と、ソーラー無しよりもだいぶ縮まります。
消費が30%(180Ah)なら、ソーラーで108Ah入ってくれれば残りは1-2時間の走行で回復します。
2024年現在では、弊社はオプションで走行充電のさらなる強化も行っており、標準で50A→オプションで60A~90Aまで可能となっていますので、回復までの時間は更に短くなります。
結果、「全然減らない」という事になるわけです。

あと、もう一つの利点として、大容量ソーラーがあると、その電力がエアコンを始めとした各機器をを動かす足しになり、結果としてバッテリーがあまり減らない という事も言えます。

エアコン冷房最大800Wの消費と書きましたが、500Wソーラ―があればその70%=350W出たとして、バッテリーからの持ち出しは450Wで済みます。冷え切って400Wくらいで動いてくれれば、50Wくらいの持ち出しは全然気にしなくていいレベルです。

まとめ めざせ!OffGrid Camper 

いかがでしたでしょうか。お問い合わせで最も多いであろうご質問の1つ。「どのくらい使えるんですか?」に少しはお答えできたかな。。?

今度からはご質問頂いた際はこの記事のリンクをご案内しようと思います(笑)

強力な充電(発電)パワーと、適切なバッテリー容量の組み合わせが大事です。

弊社で取り付けている生セル600Ahの搭載サイズは385×300×高さ240-260ミリほどです。だいたい鉛バッテリー2個分(200Ah)より少し大きい程度。

下の写真は、鉛3個をリチウム600Ahに換装した時の写真です。

600Ahでこのサイズになります。鉛2個分よりも少しだけ大きい程度。
これで数値上の容量は2倍。鉛が容量の半分程度しか使えない事を考えると、実使用においては4倍程度に感じられるはずです。
そして500W程度の大容量ソーラーを載せれば、エアコン使う時期は「ほぼオフグリッド」。使わない時期は「完全オフグリッド」が実現します。

ご自身の使い方と照らし合わせて参考にして頂ければ幸いなのでした!

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